米大統領ドナルド・トランプ氏は、ダナンで開催されるApec首脳会議に参加するためにベトナムに到着し、ハノイでのベトナム大統領チャン・ダイ・クアン氏との両国間計画会談の後、東南アジアを初訪問する予定です。

1991年以降のアメリカ大統領の訪問の中で、最も長期的な訪問となるので、北京やソウル、東京都といった有名な滞在地は、多くの注目を呼びよせる可能性があります。 アメリカ国防や産業利益の促進、「アメリカ第一」を示してベトナムのような国々との貿易赤字の解消、この地域を「インド-パシフィック(インド太平洋)」へ取り込む計画を、トランプ氏は通常の政策として取り組む方針です。しかし、アジア太平洋地域の観測者たちは少なくとも、該当地域の将来の経済構造の重要性ではなく、他の理由でベトナムに焦点を当てるべきある。

トランプ氏にとって東南アジアの調和は課題であり、本意ではないにしても、同氏のアジア政策のスタイルは、自発的な米国の撤退を助長させる恐れがあります。二国間主義の強烈な提唱もまた、多国間主義を外交政策の伝統的な基盤とする地域では失敗しています。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から撤退する同氏の決断は、外交・投資協定において勝者の1人と言われるベトナムにとって、大きな打撃となりました。

「TPP—11」解決の勢いが高まっているとの報告の中で、残りのTPP加盟国が集まった会議の余り時間に、軍事的ではない戦略的な米国の廃止の脅威について話し合われたことからも、それがApecに与える影響力は図り知れないものとなります。当初は、米国の不参加のTPPは崩壊するだろうと言われており、ベトナムでさえ、米国が不参加ならば加盟は行わないと宣言していました。しかしそれ以来、安倍総理は、残りの加盟国が前に進めるように手助けをしてきました。参加国の様々な立案は、加盟国の利益のための協定改定と待望の米国再加盟のために協定を今まで通りに保つこと、その両方のバランスをとる必要があるため、決断には難しい選択が伴います。

しかし、ベトナムのTPPへの関与をより興味深いものにしているのは、現在でも市場機関への移行や国家資本主義からの脱却に尽力しながら、急速に成長している新興経済国としての地位なのです。TPPの対策は、WTOドーハラウンドのような既存の枠組みでは不可能な方法で、上記の取り組みを支援するために、より高い基準を設定し、新しい建築様式を創出することにあるでしょう。

東南アジアで最大かつ最も早く成長している経済国ではありませんが、特に世界経済との関係から、ベトナムは、最も重要な経済国の一つとして有望視されています。
2000年代に約8%の国内総生産を達成した後は、2010年以降、6.5%を保っています。
今やベトナムは中所得国であり、貧困の削減と教育の拡大に向けて目覚める進捗を遂げています。生徒たちは、STEM教育(科学・技術・工学・数学)やPisa (OECD生徒の学習到達度調査)の評価が先進国よりも高いといった幾つかの指標において、非常に優れた成績を収めています。その国内市場も、中流階級の成長によって9000万人の市民の関心を集めています。

ベトナムのヴィンプック省のTAL衣服工場で働く労働者たち。ベトナムは、米国や日本、韓国への衣料品供給国として世界第二位の地位にあります。筆者によると、ベトナム経済は、世界経済との繋がりから、東南アジアの最も重要なもの一つとして有望と言われています。

経済の開放とグローバルバリューチェーンにおけるベトナムの地位を活用し、これを切り開くことに集中することは、この上昇を促進する手助けとなりました。つまりは、外国投資や16以上のFTA(自由貿易協定)の販売網は、ベトナム輸出の大規模な拡大を支えてきました。商品貿易は、地方の同業者やシンガポールやホンコンといった地方の中央市場を遥かに上回って、GDPの170%以上も成長しています。ベトナムは、米国や日本、韓国へ衣料品供給では、世界第二位の地位にあります。サムスン電子は、スマートフォンの約3分の1をベトナムで製造しており、スマートフォンとその部品は総輸出額の20%を占めています。

しかし、この方法は、新たな挑戦を生み出しました。
一部の製品が、基本的にベトナムで大量の輸入材料を原料に組み立てられているので、世界銀行は、電子製品輸出の総額のわずか30%のみが国内に還元されていることを明らかにしました。繊維分野のベトナム国内における付加価値は、原材料と中間投入物のカスケード体を輸出し、仕上げ前に再輸入するという構造上のサプライチェーンの破綻によって崩壊しました。トランプ氏はベトナムの米国との貿易額が320億ドルの黒字になると見ていますが、その大部分が衣料品で、その投入、技術、製造ラインにも依存している中国から貿易額は600億ドル以上になっています。

窮地に立たされている民間部門を含めたベトナム国内生産性は低く、国有部門の投資総額の半分を占めていながら、雇用総数はわずか5%です。90%以上の雇用は中小企業によるもので、事実上、全ての企業は小規模であり、信用や土地、技術が乏しく、それらを利用できる機会が欠けています。輸出産業が栄える一方で、国内民間部門への後方連携は限られています。

結果として、TPPはベトナムにとって重要な存在になりました。その証拠に、中流階級の開発費用が削減され、一党制である状況下でも、「質の高い」合意を快く受け入れています。
実際、ベトナムは、多くの発展途上国が受け入れる傾向ではない、知的財産や労働機関、公共買上げなどの厳格な規則に同意しています。参入によって不利益が発生しようとも、その魅力は、市場参入(特に米国)だけではなく、国家資本主義と効果のない制度が蔓延した支配から脱却することにあります。TPP(またはベトナム国内)から供給される中間財に対する優遇措置はまた、供給業者の投資活動を補助できる可能性があります。すでに、2014年から2016年の間に、中国からベトナムの衣料・繊維産業分野へおよそ50億ドルの直接投資(FDI)が流入し、供給業者はTPPの恩恵を受ける立場になりました。

ベトナム経済史の中で、この取り組みには前例がありました。ベトナム首脳は、世界経済システムとの戦略的契約を展開し、投資活動を誘致して輸出を拡大させるだけではなく、自国の経済構造改革を推進してきました。2007年のベトナムのWTO上昇では、数年前から、商業規制の徹底的な改革が先行されており、その一部は、技術的にWTOへの加盟に必要な条件をはるかに超えたものでした。そのような国際的協定を変化の原動力として表現するのではなく、懐疑的な既得権益に照らして、リストラをより受容されるものにするという、政策立案者の戦略の一環として表現することは誤っています。TPPのような協定にも、ベトナムが、TPPに応じるための手厚い技術支援も含まれていることが多いのです。

TPP-11とベトナムのこのグループへの加盟を成功させるための活動は、地域の経済構造の将来に重要な影響を与える可能性があります。制度の改善やグローバルバリューチェーン戦略における低利益状況の改善に集中した取り組みを法制化することは、ベトナムだけではなく、将来加入する可能性のある他のすべての発展途上国にも有益なものになります。また、「国境を超える」という障壁に対処できる性質と仕組みに支えられている、貿易・投資制度案を融通できることは、先進国にとっても有益であり支援されるべきです。

結果として、地域の観測者たちは、ダナン市とベトナムの幅広い経済情勢の重要性を隠すために、トランプ氏の訪問による必然的な批判や暴露を避けるべきではありません。今年の初めに、ワシントンへ最初に訪問することになった東南アジアの国であるベトナムは特に、トランプ政権との関係管理に長けていると言われています。運が良ければ、ハノイの来訪では、トランプ大統領の破壊的な欲望を満たせる十分な二国間援助を望むことができます。確かに、同国はまた安全保障の必要性も危惧されており、米国との地域密着を継続的に推進する必要があります。しかし、経済面では、トランプ氏が二国間取引で継続的に多額の利益を得ると言われている一方で、経済開放による多国間の取り組みの恩恵を受ける国々は、ベトナムに細心の注意を払うべきであると言われています。